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よもやま話

Short Story

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  •  2018.11.15

世に飛び交う気になる言葉-虫を食べる-(その1)

はじめに

 世界の人口が、2040年90億人に、2050年95億人に達する[1]との予測があり、大きな人口増加が危惧されています。人口の顕著な増加によって、いろいろの問題が起きるでしょうが、とりわけ食糧問題が深刻だと考えられています。

 一体、90億人が食べていけるだけの食糧増産が可能なのか、多くの研究機関で検討されています。そのような背景を踏まえ、今日は国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations)の食糧調達方針に関する提言をご紹介します。

 

FAOの報告書から

 FAOの報告書(2013)は、「食べられる昆虫─食料と飼料の安全保障に向けた将来の展望─」というタイトルが付され、今後、危惧される食糧問題の解決策として、「昆虫食」を提唱しています[2](概要版[3])。

 昆虫は、少なくとも20億人の人々の伝統食の一部を構成すると見られ、1,900種以上の昆虫が食材に用いられていると報告されています。種の数で見ると、世界で最も広く食されているのはカブトムシなどの甲虫(鞘翅目31%)、芋虫(鱗翅目の幼虫18%)、ハチ、アリ(膜翅目14%)、バッタ、イナゴ、コウロギ(直翅目13%)、セミ、ウンカ(半翅目10%)、シロアリ(等翅目3%)、トンボ(蜻蛉目3%)、ハエ(双翅目2%)、その他(5%)という内訳で、多彩な昆虫が食材になっていると紹介されています(10頁)。分類上は昆虫に入らないクモやサソリも虫の一種として食されています。

 FAOが指摘する昆虫食の有利な点は、昆虫養殖において、飼料要求率が低い、餌が人の食料と競合しない、栄養学的に優れている、飼育に必要な水が少なくてすむ、家畜と比べて排出二酸化炭素が少ない、種類が多い、繁殖力が旺盛などだそうです。

 欧米では虫を食べた歴史に乏しく、アジア、南北アメリカ、アフリカなどの地区より心理的な抵抗が強いために、こうした白書によって啓蒙を図っているのかもしれません。昆虫食に関する報道は欧米で目立っているようです。中国、東南アジアでは当たり前のことだからニュースにもならないのかもしれません。日本では、ハチの子、ざざ虫などの価格が上がり、今や高級食材になったことがニュースに取り上げられています。

 また、この報告書の「第6章 昆虫の食糧としての栄養学的価値」の81頁以降には、食糧用昆虫の写真や、東南アジア諸国の街角で虫食材の売られている様子が収められています。

 

日本の昆虫食

 栄養価が高い昆虫は、世界80%の国で日常的に食されています。昆虫が省資源で育てることができる点を利用した昆虫養殖企業もあります。
日本でも伝統的に虫を食してきました。日本のかつての昆虫食の状況を知ることができるのは、1919年(大正8)年の報告書『食用及薬用昆虫に関する調査』です[4]。ここには、ハチ類14種、ガ類11種、バッタ類10種、甲虫類8種など、全部で55種類もの昆虫が食用とされていると記載されているそうです[5]

 地域別に、トップは長野県の17種、次いで山口県の12種、山梨県の10種、山形県と愛媛県の8種と続き、47都道府県でなんらかの昆虫が食されていると記載されていました。

 イナゴや蚕の蛹(さなぎ)の佃煮など、多くの方は、常食ではないにせよ、召し上がったことがおありだと思います。ある地域では現在でもスーパーで普通に売っています。日本では、一部の昆虫が高級食材として販売されていますが、今では、かつてほど昆虫食は盛んではなくなりました。

 

メニューと味わい

 昆虫料理研究会(代表:内山昭一氏)は定例試食会を開いて昆虫食の啓蒙活動を展開しています。その記事からいくつかのメニューと味わいをご紹介いたします[6]

トノサマバッタの素揚
 味も食感もエビに似ています。とくにモモ肉とムネ肉が非常に発達していて、その部位が感動するくらいにおいしかったことから、内山氏は本格的に昆虫食を研究するようになったと語られています。

素揚げバッタのチーズフォンデュ
 バッタは素揚げしただけでもエビの風味がして美味しいのですが、とろとろに溶けたチーズをまとわせることで、バッタとチーズの旨味がミックスして、さらに深みのある美味しさを演出します。口触りもまろやかで、とても食べやすくなるそうです。

 そのほか、「虫あんみつ」、「セミ炒め」(香ばしい香りと幼虫のサクサク感がたまらない)、「タガメ」(洋梨の香りが素晴らしい)など多くのメニューが参加者に供され、参加者の皆さんは興味津々、楽しみながら? 虫料理を味わっているといいます。

 「おいしい虫ベスト10」のコーナーは驚きのランキングです[7]

 


[1] wikipedia世界人口 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%BA%E5%8F%A3
[2] 食糧農業機関の報告書 Edible insects – Future prospects for food and feed security 2013
http://www.fao.org/docrep/018/i3253e/i3253e00.htm

[3] 昆虫の食糧保障、暮らし、そして環境への貢献 http://www.fao.org/3/d-i3264o.pdf
[4] 昆虫食入門 内山昭一(著)平凡社
[5] 食べないと損?!私たちが「昆虫食」を選ぶ時代は近い
https://honto.jp/article/business/konchusyoku.html
[6]  昆虫料理研究家が語る昆虫先進国の日本で「昆虫食」が廃れた理由 Mugendai 2018.6.14
https://www.mugendai-web.jp/archives/8590
[7] 昆虫料理研究会 http://insectcuisine.jp/

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