- 2019.04.17
治験にまつわる実際の話(1)二重盲検試験用の治験薬の製造(その2)
前回は、基本的なパターンをお示ししましたが、今回は、応用編です。
複数用量を二種類のカプセルで比較する場合
前回にお示ししたように、カプセルを3つ使った複数用量の二重盲検用治験薬があります。しかし、カプセルを3つも飲んでいただくことは患者様にご負担をお掛けすると考えると、何らかの配慮が求められることが多いものです。その場合は二種類のカプセルサイズ(大、小)を用います。
【被験薬(カプセル)三用量をプラセボと比較する治験薬】
※図の上で区別するため、カプセルの色は赤がプラセボ、青が実薬を表しますが、 ※5 mg と 10 mg の被験薬と同じサイズのプラセボカプセルを用いました。 |
このやり方では、用量が倍数でなくても、高用量=低用量+中用量 の場合に適応できます。たとえば、2 mg, 5 mg, 7mg 、あるいは2 mg, 6 mg, 8mgなどの用量設定ですが、特殊な場合になります。
複数用量を二種類のカプセルと既存薬(錠剤)とで比較する場合
今まで見てきた方法は、被験薬とプラセボのいずれも錠剤を用いる場合にも同じことが言えます。では、カプセルの被験薬(三用量)と錠剤の既存薬の比較ではどうでしょうか?実は同じことです。
【被験薬(カプセル)三用量を既存薬(錠剤)と比較する治験薬】
※ここでは、5 mg と 10 mg の被験薬と同じサイズのプラセボカプセルと ※錠剤はオレンジ色がプラセボ、黄色が実薬を表しますが、実際は同じ外観とします。 |
既存薬は、他社が製造販売していますから、これから実施したい治験の実施計画書を提示し、その会社にお願いして製造していただく必要があります。さらに外観が同一のプラセボ錠も同時に作っていただきます。通常に販売されているお薬はマークや番号などが錠剤に刻印されていますので、こうした刻印のない治験用の錠剤が必要なのです。
通常のカプセルと錠剤を比較する場合
前の例では理論的に可能でも、カプセル二種(大、小)と錠剤を合計3つも飲まなくてはならなくなりました。しかし、実際には、対照薬(実薬)と比較する試験はフェーズ3の実薬比較試験であり、被験薬はフェーズ2で最適と選ばれた一用量を用いますから、このようなことは必要でないことが多く、次の様になるのが普通です。
【被験薬(カプセル)の至適用量を実薬(錠剤)と比較する治験薬】
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本当のクスリと同じ外観のプラセボをダミーと呼び、これまで見てきたように、異なる形(錠/カプセル、サイズ)の二種類のプラセボを用いる方法をダブルダミー法と言います。これを用いれば、被験薬と既存薬が異なる外観の製剤でも二重盲検として比較できます。ダブルダミー法では、必ず二つ以上を飲まなくてはなりません。
しかし、ダブルダミー法は、たとえば塗り薬のような場合、塗布する同一の箇所に異なる薬を塗るわけにはいきませんから、適用できません。塗り薬では、内容物の異なる外観の同じ製剤が必要になります。