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よもやま話

Short Story

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よもやま話

  •  2016.08.01

プラセボって、なあに? なぜプラセボと比較するの?

 お薬を使わない患者さまでも病気は良くなることがあります。たとえば、お医者さまから励まされたり、病気のことを丁寧に説明されれば、患者さまは安心して、病気が良くなることは想像しやすいと思います。また病気によっては、時間の経過とともにひとりでに良くなっていく病気もあります。

placebo_1_4 こうした現象は、薬の効果があるのかないのかをきちんと評価する場面では、少し困ったことになります。ある薬を使っているとき、お医者さまの励ましで病気が良くなったり、ひとりでに治る時期に当たっていれば、効かない薬でも効いたと誤って判断されかねません。

 つまり、薬を使った後で病気が良くなったとしても、必ずしも、薬が効いたために良くなったとは言えないのです。薬の効き目が本当にあることを確かめるためには、お医者さまによる人間的な効果や病気の自然治癒傾向と、薬の効果をきちんと区別して評価しなければなりません。
 そのために考え出されたのが、プラセボ(偽薬)を用いる二重盲検という方法です。

 経口剤のプラセボは、たとえば、薬の効果がなく、飲んでも安全なでんぷんや糖などを用い、薬効を確かめたい治験薬(被験薬)と外観が区別できないように錠剤やカプセル剤を作ります。プラセボと被験薬とを、お医者さまにも患者さまにも(二重)、いずれであるか分からないようにして患者さまに飲んでいただき、その効き目を比べます(盲検)。

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 試験全体が終わったあとで、一人一人の患者さまが被験薬かプラセボのいずれを飲んだのか明らかにして、それぞれの効き目や安全性を比較します。この結果、もちろん、プラセボを飲んだ患者さまで効いている方もたくさんいらっしゃいます(プラセボ効果)。被験薬を飲んで効いていない方もいらっしゃいます(被験薬無効例)。また、プラセボを飲んでも副作用がでる患者さまがいらっしゃいます。

 なんの薬効もないプラセボを飲んでさえ、この病気はこれくらい良くなるのだ、というデータを踏まえて、被験薬の効き目を考えるということです。あるいは、なんの悪い作用もないプラセボを飲んでさえ、この病気の患者さまは、これくらい副作用がでるのだ、というデータを踏まえて、被験薬の安全性を考えるということです。プラセボを飲んでも出るような副作用は、被験薬を飲んで出たとしても被験薬のせいだと言うより、この病気の患者さまは、よくこのような症状がでるのだ、と考えたほうが自然な場合があります。

 

 こうして、プラセボと比較して有効率をみると、効く薬では、やはり、プラセボより高い有効率が示されます。この場合、プラセボより効いているので、薬効が示されたと考えるのです。また、プラセボより副作用が多くても、許容できるか否か考察します。

 複雑なことは省きますが、薬効や安全性を検定する統計学の理論が確立しています。

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