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よもやま話

Short Story

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  •  2019.04.21

盲検化って、なあに?(その2)

 前回は、盲検化するための実際の作業手順をお話しました。盲検化のやり方はお分かりになっていただけたでしょうか?

 それでは、盲検化を解除するための条件、時期についてご説明いたします。盲検試験で、どのお薬を飲んでいただいたのか、それがわかるようになるのは、いつ、どのようにしてなのでしょうか?これが今回の主題です。

 

キーオープン:盲検化の解除

 盲検化した治験では、途中でデータが集まってきても、どの薬のデータなのかわかりません。この段階では、書き間違いや誤解による誤った記載があっても、正しい記載に改めることが出来ます。一つ一つ点検し、治験担当医はデータを誤解のない正確なものにしなければなりません。誤解による誤記載には、日付の間違い、勘違いなどがよくあります。どの薬か分からないのですから、データを修正してもバイアスはかかりません。

 こうして、データ全体にわたって、書き間違いや誤解による誤った記載がないか精査したあと、データをもう修正しないこととします(データ固定)。

 データが固定化されれば、いよいよ、盲検化の解除のステップに移ります。盲検化の解除とは、とどのつまり、キーコードを担当医も患者さまも、開発する製薬会社も知ることです。前回、お話したキーコード表を治験関係者の間で公表することがキーオープンです。

 患者さまはご自身の飲んだ薬を知り、担当医は患者さま方に処方した薬の内容を知り、製薬会社は全ての患者さま方の飲んだ薬を知ります。キーコードの封印を解くので、キー(コード)ブレイクとか、キーオープンなどと呼ばれます。キーコードを知ってからデータを修正すれば、バイアスのかかったデータとみなされ、事実上、二重盲検比較試験ではなくなってしまいます。

 キーオープンして初めて、患者さまのお飲みになった薬が特定でき、データをお薬ごとに集計、解析できようになり、異なるお薬の有効性と安全性を比較できるようになるのです。

 

盲検化の途中解除

 これは例外的なことなのですが、ある患者さまに有害事象が出て、どの薬を飲んだのか知る必要が生ずることがあります。たとえば、次のような場合が例にあげられます。

 有害事象が発生して緊急に病院に搬送され、たとえば、胃洗浄の処置を行って患者さまの飲んだ薬を体外に出してしまうことが必要になったとき。

 胃洗浄のような、かなり大掛りな処置をとろうか検討したとしても、お飲みになった薬がプラセボであったなら、そのような処置は必要ありません。つまり、患者さまのお飲みの薬の種類によって、有害事象の処置の方針が大きく異なる場合、患者さまに不要のご負担をかけないようにするため、緊急にその患者さまのキーコードを開き、薬の種類を特定します。これは、前述したとおり、切り取ったフラップを封筒に封印した一例ごとのキーコードを開封し、他の患者さまの盲検性を保つようにします。

 一方、下痢という有害事象がでたため、治験でどの薬を飲んだかに関わらず、整腸剤を処方しようとなった場合には緊急に盲検化を解除する必要はありません。プラセボをお飲みになっていたにせよ、被験薬をお飲みになっていたにせよ、いずれでも処置(整腸剤)は変わらないからです。治験では、途中の盲検化解除はしないことが原則であり、患者さまのことを考慮してキーコードを開封した場合は、その理由を明確に説明しなければなりません。

 前回、2例1組で割り付けてはいけないと書きましたがその理由はもう、お分かりのことだと思います。緊急のキーオープンを行えば、盲検化を守りたかった残りの患者さままで、どのお薬を飲んだのか、分かってしまうからです。そういうときは、4例1組で割り付け、1組が、被験薬2例、対照薬(この場合は実薬)2例から構成されるようにするのが普通です。もちろん、6例1組で3例ずつの構成でも構いません。

 3例1組の割り付けで、途中でキーコードを緊急に開封した患者さまが2人出れば、残り一人の患者さまのキーコードは自ずとわかってしまいますが、このような場合は起こる確率が極めて低く、考慮しなくてもよい場合がほとんどです。

 外観の同一な治験薬をどのように作るか、そうして作られた治験薬をどのようにランダム化し、二重盲検化するのか、お分かりになられたでしょうか? 一種の頭の体操でもありますから、お暇なときにパズルとしてお考えになってみてください。

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